デビュー時点からライバルのコロナと売上競争をしていたブルーバードの話です。
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BC戦争
COVID-19の略称と化してしまったコロナですが、かつてはトヨタが販売していたクルマの車名を思い浮かべるのが一般的でした。
そんなコロナのライバルとして存在していたのが日産のブルーバードでした。
ファミリーカーがミニバンやトールワゴンに移行してしまい、コロナもブルーバードも消滅してしまいましたが、当時は同じセグメントの対抗馬として壮絶なトップ争いを繰り広げていました。
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開戦前夜
コロナの発売が1957年で、ブルーバードが1959年からですが既にバトルは開始していました。
1955年にダットサン110型とトヨペット・クラウンがデビューしました。
(※画像はダットサン211)
それ以前にも国産自動車メーカー各社は乗用車をリリースしていましたが、本格的に大量生産されたクルマはこの2車種が最初とも言えます。
ダットサン110型は860ccエンジンで、1000cc以下の小型タクシーでシェアを占め、クラウンはタクシー向けを想定して同時発売したトヨペット・マスターを退けて、1500cc以下の中型タクシーでシェアを占めました。
中型のクラウン、小型のダットサンという構図が出来ました。
当時はまだ一般家庭で自家用乗用車を所有するという概念が無かったので、乗用車の販路はタクシー業界がメインでした。
開発・製造のトヨタ自工と販売のトヨタ自販に分かれていた当時のトヨタのトヨタ自販は、タクシー業界からダットサンに対抗する小型タクシー枠のクルマを出してくれと要望されますが、トヨタ自工が企画・開発中の1000ccクラスは1960年をめどにスケジュール進行していました。
その為トヨタ自販主導で既存のパーツを上手に組み合わせて、架装メーカーの関東自工に急遽造らせたのが初代コロナです。
これがコロナとブルーバードのBC戦争の前哨戦となります。
結果は戦前から小型車の代名詞だったダットサンに、既存パーツで慌てて造ったクルマが勝てる訳が無くコロナの惨敗でした。
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BC戦争開幕
1959年にP310型ブルーバードが実質的なダットサンの後継車として発売され、新型トヨペット・コロナも1960年にデビューします。
(※画像はブルーバードP312)
ブルーバードが、どちらかというと従来のダットサンをリニューアルさせた様な、凡庸ながら堅実な構成の新型車だったのに対して、実質的には新規開発車の二代目コロナはタクシー需要のみならず、間もなく開花する自家用乗用車需要も見越した斬新な設計とスタイルのクルマでした。
しかし初期のボディ剛性の弱さと、日本の酷道でのタクシー用途での酷使がリアサスの性能の限界を超えていた事によるトラブルの印象の悪さからタクシー業界の不評を買い、以降改善させたものの初期に貼られたレッテルを払拭出来ず、ブルーバードに勝つことは出来ませんでした。
ブルーバードは飛びぬけた特徴はないものの、タクシーにも自家用車にも使える汎用性でコロナに勝ちました。
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家庭でクルマを所有する時代が到来。
1963年にブルーバードが二代目(410)にモデルチェンジ、1964年にコロナが三代目(#T40系)に変わります。
この頃には、つい数年前まではそれこそ今の感覚に置き換えると各家庭にヘリポートが有って自家用ヘリコプターを所有しているようなあり得ない事柄だった、自家用乗用車が爆発的な勢いで普及するようになっており、コロナもブルーバードも主力がタクシー需要から一般家庭向けのマイカー需要に置き換わっていました。
既に前モデルの途中でコロナは1500ccがメイン、ブルーバードはほぼ1200ccとなっています。
ブルーバードは従来のフレーム式を改めてモノコックボディになり、イタリアのピニンファリーナにデザインを依頼して先端のイタリアンスタイルにモデルチェンジしました。
ルパン三世の銭形警部のパトカーのイメージから今では銭ブルとも呼ばれる410系です。
コロナは、先代の弱いイメージを払拭する為に以前よりは骨太でやや鈍重なスタイルに変更し、機構もオーソドックスな物で凡庸ながら堅牢さを全面に打ち出しました。
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スタイリングの悲劇
それまでコロナに勝っていたブルーバードに不運が訪れます。
ピニンファリーナに依頼したイタリアンデザインが日本人の感覚に受け入れられず、
前端から後部にかけて徐々に下がっていくように見えるシルエットが不評で、尻下がりというあだ名を付けられてしまいます。
最初期に、モロにイタリアンテイストでややアクの強かった外装のディテールは、すぐに日本人好みなチマチマした細かい意匠に変更され、コロナの1500ccに対して非力な1200ccは1300ccにアップされました。
最後は後部を中心に各部の板金プレス型を変更して尻下がりのデザインを改修しますが、尻下がりのイメージは拭いされず、コロナの圧倒的勝利に終わります。
1967年になるとブルーバードは510型にモデルチェンジします。
510型は日本国内だけでなく北米を主に、世界各地でも通用するスペックを目指して開発されました。
コロナのほうは40系が絶好調で、40系は継続生産させて新たに2000ccのクラウンとの隙間を埋める1600ccのコロナマークⅡ(RT60系)を発売し、双方を併売する方策とさせました。
このコロナマークⅡ(RT60系)は元々40系の次期モデルとして開発していた物でした。
日産は1966年にプリンス自動車と合併したので車種が一気に増え、1500ccクラスにはスカイラインが加わりますがコロナの直接のライバルとも言えず、引き続きブルーバードがコロナのライバルでした。
510型は当初411から継承した1300ccでしたがすぐに新開発の1400ccとなり、411の頃に追加されたスポーツ系SSSの1600ccと二本立てとなりました。
510ブルーバードは国内外で非常に好評で、特に北米で210ダットサンの頃から地道に築いてきた販路を、フェアレディZやダットサントラックと共に一気に広げて全米にダットサンブランドを認知させたクルマとなりました。
40系コロナと510ブルーバードの勝負はどちらも勝者といった印象です。
つづく
尻下がりで不評となってしまったピニンファリーナのデザインがストレートに表現されていた、ごく初期の仕様ですね。
間もなく下の銭ブル仕様に改修されました。

トミカリミテッドヴィンテージ 1/64 LV-65c ダットサン ブルーバード 1200 ファンシーデラックス 黄 (メーカー初回受注限定生産) 完成品
ルパン三世の銭形警部のパトカーがこの銭ブルですねw 410ブルといえば、この鍵テール仕様の印象が強いです。

トミカリミテッドヴィンテージ 1/64 LV-183a ダットサン ブルーバード パトロールカー 警視庁 (メーカー初回受注限定生産) 完成品
1/24スケールプラモデルの510ブルです。510ブルーバードはかなり細かい変遷をしているので、こちらはⅡ型かⅢ型ぐらいでしょうか?

ハセガワ 1/24 ニッサン ブルーバード 510 1600SSS 1969 プラモデル HC8
こちらは初期のワゴン1/64ミニカーです。初期モデルはケンカワイパーが特徴です。

トミカリミテッドヴィンテージ 1/64 LV-81c ダットサン ブルーバード エステートワゴン 青 68年式 (メーカー初回受注限定生産) 完成品