外装の傷みがDIYで手に負えなくなった、1970年式カトラスの外装の大規模補修をした話です。
今回は店を選んだ際の話です。
旧車オーナーで、世間一般で言われる外装レストアを検討している人などには参考になるかも知れません。
- DIYの限界
そもそもこのカトラスは、外装をDIYで仕上げてみようと思って入手したクルマでした。
しかし自家塗装は、作業途中で急遽終了させなければならない事態に陥ってしまい、更にその後自家塗装を出来る場所と工具を失ってしまったので、傷んだ部分に缶スプレーを吹いて誤魔化していました。
ところが缶スプレーを塗り重ねていたら、塗料の違いから塗面の広範囲に細かいクラックが入ってしまいました。
更にリアウィンドーの下端が腐食して穴が開き、トランクに雨水が侵入するようになってしまいました。
クラックの入った塗面を修正するには全面を一旦クラックのない部分まで削り落とさなければなりませんが、工具も作業場所もないのでお手上げとなりました。
丁度その頃、消費税が5%から8%に増税されるというニュースが流れていた時代で、例えば50万円の作業を依頼して25.000円だった消費税が4万円になってしまうのはバカバカしいと思い、増税前に大掛かりな作業をプロに依頼する事にしました。
- ショップ選び
今回の大規模補修の最大の目的は、塗装を綺麗に仕上げる事ではなく、腐食した各部を出来る限り鉄板の溶接で修復したい。
という点でした。
いつも面倒を見て貰っているショップに依頼できれば最善でしたが、そのショップは板金と塗装の腕は超一流なのですが、腐食した部分の補修に関してはレストアが専門でないので選定の優先順位を下げる事にしました。
とは言え、当方はレストアを受け付けるショップを多数知っている訳ではありませんでした。
なので、以前知人のクルマに大掛かりな改造を施したレストア専門店を第一候補にして、Webで外装のレストアを請け負うショップを探しました。
結局当時Webで見つけてレストア受付中だったのは、レストア「も」やりますと謳ったショップが1件あっただけでした。
- 店の選定
結論を言うと過去に知人が改造を依頼したレストア専門店を選択しました。
知人のクルマで仕上がりは見ていますし、年月が経過していても大きな問題が生じていなかったからです。
レストアでの、当方が伝聞した他の事例を紹介します。
レストア専門ではないものの名の通った店に「合間を見て少しずつでも本格的にレストアして欲しい」と依頼して、10年間コツコツと完全にクルマをバラバラにして本格的に作業されていたのですが、末期に作業が手詰まりとなってしまった様で、作業は殆ど進まなくなり、やりました的なこじつけみたいな作業で月々の管理費だけ請求されるような事態に陥ってしまいました。
結局、他のプロに相談して交渉し、工場から引き上げて相談したプロの元で1年で完成させました。
10年間コツコツと作業してきた名の通った店としてはメンツが丸潰れですし、界隈では影響力が絶大な店なので、引き上げたプロの方もその後仕事がやりにくくなるリスクが高く、オーナーさんも、その後も旧車の交流を続ける上で縁が切れない、影響力が絶大な店との関係が微妙になる事案でした。
他にもいつもの店に修理を依頼し、部品の入手難で作業が頓挫し、何年も工場の奥に放置されて、やはり旧車仲間に相談して交渉し、工場から引き上げて旧車仲間が依頼している別のプロの元で修理を完了したという事例も知っています。
旧車の場合、受けたプロはキチンと仕事をするつもりでも、様々な要因で途中で作業が進まなくなってしまう場合があるようです。
このような点も鑑みて、修理や整備がメインでレストアも出来る店ではなく、知人の施工例も見ていてレストア専門で実績も多数ある店を選択しました。
- フルレストアの費用は?
フルレストアはどの程度の費用が掛かるのでしょうか?
作業をプロに依頼すると決めた2013年当時、Webで検索してもほぼ金額が明示されているケースは見つけられませんでしたが、一旦クルマを全部バラバラに分解して腐食部分を補修して組み立て直すと、最低でも300万円は掛かりそうな事が判ってきました。
しかもレストアは、新車の修理のように最初から明確な見積もりが出しにくく、分解途中に新たな要補修ヶ所が次々見つかり、修復費用と工期が増してしまう様子です。
当時参考にした見積明細です。
総額 3.164.700円(2008年当時)ですが、とんぶり勘定ではなく明細が全てキチンと示されています。
レストア・ブログ―カー・マガジン・ガレージ: モーリス1100のレストア 第3回(見積もり編)
300万円と聞いて、エッ!そんなに高いの?と思った方は少し考えてみて下さい。
一旦クルマを全部バラバラに分解して、塗装や錆びを完全に落とし、腐食して穴の開いた部分を切り出した鉄板を溶接して修復し、入念な防錆処置を施して組み立て直して、フルレストアならエンジンや足回りも分解清掃して塗装して組み直し。
例えば前後バンパー等のメッキパーツを一式まとめて外注で再メッキしたら20~30万円程度掛かると思います。
その他交換部品代だけでも相当な額に達すると思います。
その分は工場の収入にはなりません。
1~2週間で終わるモノではないので数ヶ月分の工賃が掛かる上に作業環境や用具の維持費も加算されます。
数ヶ月手が塞がって、まるまる300万円店の儲け(純利益)になる訳ではありません。
それでもあなたは高いと思いますか?
もしくはあなたは今諸経費込み300万円で作業を受けられますか?
あなたが受けた(もしくは自分でやる)場合、諸経費込みだと作業に必要な設備に揃える工具代と工場の家賃と部品代で、殆ど自分の手元には残らないと想像出来ませんか?
この動画を見て下さい。
とても300万円では済まない作業の質と量であると判ると思います。
このレストアもこれだけの作業なので、300万円どころか相当な金額になっている筈です。
悲しい事に日本ではココまでやってしまうとべらぼうな金額になってしまい、程度の良い中古車を買ったほうが安上りになってしまう為に事業として成立しにくく、依頼者も受ける業者も極僅かに限られてしまいます。
レストアの認知度が著しく低いので、世間一般では300万円が高いと感じる人が殆どです。
だったら程度の良い中古車を買うと考える筈です。
そこで現実的な費用の範囲内で修復させると、完全にクルマをバラバラにしたら予算オーバーですし、細部まで純正オリジナル状態に戻すより、社外パーツで車高を落としてアルミホイールを履かせて、部品の出ないモールやエンブレムは削除して色替えし、非オリジナルな状態に仕上げるほうが主流となってしまいます。
と、話が大きく逸れてしまいましたが、
旧車の場合、新車を整備や修理に出すように、預けたら確実に予定の納期と費用でクルマが戻ってくるとは限らないと知っておくのと、受けた店側も悪意があって遅延したり作業を膠着状態にしている訳ではないので、納期や見積もりに大幅な狂いが生じる覚悟は必要です。
また、最悪膠着状態になってしまっても、怒ってあの店はダメだと拡散してケンカ別れで徐々に頼める店を減らしていくより、上記の事例のように穏便に話し合って他のプロに引き継げるように、旧車仲間のネットワークを構築しておいた方が理想的ですね。
次回、当方の店とのやり取りを話したいと思います。