という事で今回は国産旧車と初期の社外アルミについて深掘りします。
普段あまり顧みられる事の少ない、日本の一般向け社外軽合金ホイールの黎明期の実際を知ってほしいと思います。
- はじめに
今回のタイトルが「国産旧車に定番のワタナベ8本スポークは当時っぽい訳ではないという話」なので、読まれた方の誤解を避けるために定義付けをしておきます。
- 国産旧車の定義
近年は80年代~90年代車も登場から30~40年経過して旧車の範疇に入れられる場合も多くなりましたが、今回述べる国産旧車は60~70年代前半(昭和30~40年代)の車両に関しての話です。
- 当時っぽいの定義
今回の「当時」は昭和30~40年代のクルマが新車~せいぜい3~4年落ちの時代を「当時っぽい」と定義します。
具体的には昭和30年代中盤~昭和51年(1960~1976)ぐらいの話となります。
- 社外アルミの定義
世間一般には社外品の軽合金ホイールを社外アルミと呼ぶほうが通じるので、厳密には材質がアルミではなくマグネシウム等の軽合金ホイールも含めてアルミと記述する事にします
- 国産旧車に社外アルミを装着する事を否定する話ではない。
タイトルが「~ではない」という否定構文なので、早合点して国産旧車に社外アルミはダメと主張しているように勘違いしてしまう人が出るかも知れませんが、そもそも自分のクルマをどうイジろうがオーナーの自由なので、法規を無視して迷惑行為をするような改造以外であれば外野が口出しする事柄ではありません。
まして60~70年代の国産旧車の場合は、純正の鉄ホイールが入手困難だったり当時のタイヤサイズが製造廃止で純正ホイールに合うタイヤが選べずに、社外アルミを装着しているオーナーも多いと思います。
なので、この文章は社外アルミを履いた旧車をディスっている訳ではないとご理解下さい。
- 日本の社外アルミのはじまり
ワタナベ8本スポークが当時っぽいとは言い難い理由の第一は、いつから日本で社外アルミが販売されるようになったか?とその旧車の年代の整合性にあります。
日本ではまず1966年頃からレース用に軽合金ホイール(主にマグネシウムホイール)が出回り始めます。
それまでは日本車はワークスのレーサーでもほぼ鉄チンです。
そして1967年にエンケイが輸出用のアルミホイールを本格的に製造しはじめ、1968年からは国内でも販売開始します。
同じ1968年にワタナベの8本スポークも発売。
なので日本で一般向けに社外アルミが出たのは1968年と言う事になります。
という事は、1960年代初頭より前の国産旧車と社外アルミの組み合わせは少なくとも「当時っぽく」はないという訳です。
メーカー純正は1967年(~70年)のトヨタ2000GTと1969~73年のS30フェアレディZ432のマグネシウムホイールしか無かったと思います。
どちらも一般庶民には縁遠いクルマです。
- 高価で手が出なかった社外アルミ
では1968年に当時風にいう「カーキチ」達が一斉に社外アルミに飛び付いたかというと、答えは「NO」です。
さすがに当方も当時は生まれたばかりの赤ん坊なので、リアルタイムで実際に見た訳ではありませんが、今と当時ではクルマを取り巻く背景が違います。
- 一般人は基本新車をディーラーで購入
1966~68年頃を想定すると、当時はカーセンサーで検索という時代ではないので中古車の出物の情報はあまり出回っておらず、中古車は知り合いのつてというルート以外では玄人向けでした。
当時はクルマの知識も経験もない、初めてマイカーを買う人が大多数で普通の人はディーラーで新車を買うのが一般的でした。
また、オートバックスのようなカー用品店があちこちにあった訳ではないので、クルマの改造やドレスアップも一部のカーマニア以外にはあまり一般的とは言えない状況でした。
ググれば欲しい情報がすぐ出てくる時代ではないので、一部の熱心なカーマニア以外の一般のマイカーユーザーは、メンテはディーラーか行きつけのガソリンスタンド任せで、どこに社外品のアクセサリーパーツが売っているかどころか社外品のアクセサリーパーツが出回っている事すら知らない人のほうが多かった筈です。
なので普通の人々はせいぜいフォグランプやストップランプ、ネオンコントロール(へたくそ棒)などで愛車を装飾するのがいいところでした。
ごく一部に中古車を走り屋風に改造する人達も居たみたいですが、国産アルミが販売された1968年当時はまだ軽合金ホイールはワークスのレーシングカーが装着するぐらいで、公道を走る一般車に社外アルミを履かせられるのはほんの一握りの金持ちマニアだけだった筈です。
1972年頃まで主流だったのはアルミではなく、鉄チンの加工ワイドホイールやトピーやアルスターの鉄チンのメッキホイールでした。
なので本当に「当時っぽい」と言えるのは社外アルミではなく鉄チンの加工ワイドホイールやメッキホイールと言えます。
このツイートの画像が1972年でもかなりイジっているクルマですが、アルミではなく鉄チンの加工ワイドホイールです。
太陽にほえろ!
— ぜん (@zen206swxs) 2019年1月1日
14話「そして拳銃に弾をこめた」より。
オバフェンベタベタのバリカンコロナが気になって、ストーリーがアタマに入らないww pic.twitter.com/w1DvtFXZvg
その後1973年にハヤシのストリートとスピードスターのマークⅠが出ます。
この1973~4年頃から、警察の取り締まりや社会の風当たりが厳しくなる1976年頃まで「暴走族」がブームになり全国に珍走団が湧きました
なので中古車を改造して乗る若者が大増殖しました。
ハヤシのストリートやスピードスターのマークⅠは出たばかりですが、実際に街中で見るのはほぼエンケイのディッシュ(5スロット)でした。
比率的には圧倒的な台数の、加工ワイド鉄チンとトピーやアルスターのメッキ鉄チンの中に、金持ちのクルマ好きの社外アルミが若干混ざるという感じです。
改造車の車種はダルマセリカ・セリカLB・サバンナRX3・チェリークーペ辺りで、S30フェアレディは比較的金持ちで社外アルミ率は高かったと思います。
ただそのフェアレディZはワタナベ8本スポークでなくエンケイのディッシュかメッシュでした。
エンケイメッシュといっても、皆がイメージするタイプではなく下の画像のモデルです。
1977~78年頃になると最上級グレードの国産車に純正アルミが設定されるようになり、79年頃から社外アルミのバリエーションが一気に増えた記憶があります。
1981~82年頃になると、若いカーマニアは軒並み3~7年落ちの中古車である愛車に社外アルミを着けるようになります。
エンケイが協力(スポンサー)していた刑事ドラマ「西部警察」シリーズでは破壊される車両までほぼ全車に新品のエンケイのアルミホイールを装着させて製品アピールをしていました。
なので純正アルミを履いた国産旧車で「当時っぽい」と感じられるのは1981~82年頃の「当時っぽさ」で、その3~7年落ちから現行だと1974~82年頃のクルマだと「1981~82年当時っぽい」と思えます。
では「60~70年代前半の国産旧車にワタナベ8本スポークはダメ」なのか?といえば全く違います。
ココまで述べてきたのは「良いかダメか」の基準でなく、60~70年代前半に純正アルミはメジャーではなく加工ワイド鉄チンやピーやアルスターのメッキ鉄チンが主流だったと言っているので「似合う似合わない」は別次元の話です。
60~70年代前半の国産旧車にワタナベ8本スポークは似合うけど「1960~70年代前半当時っぽい」訳ではないのです。
しかも60~70年代前半の国産旧車乗りは当時風を忠実に再現しなければならないのか?と言ったらそんな必要は皆無ですw
- ワタナベのバナナスポークホイールが60~70年代前半の国産旧車に似合う訳
実際には1960~70年代前半のリアルタイムには余り実在しなかったワタナベ8本スポークを装着した国産車に、ワタナベ8本スポークが似合う理由に思い当たる節があります。
日本のレース界では、1966年からワークスのプロトタイプレーサーがそれまでのワイド鉄チンから一斉にマグネシウムホイールを使い始めます。
これは1967年の映像ですが 、0:15~のフェアレディSR311は鉄チンです。
オバフェン化もされておらずバンパーやサイドモールも付いたままです。
まだ一般向けの社外アルミも販売される以前です。
これが実際の1967年です。
1969年~70年頃になると、日産やマツダなどの市販車ベースのツーリングカーの上級クラスのワークス車両もマグネシウムホイールになります。
トヨタワークスのマークⅡ・1600GT・レビン等は井ゲタ風のデザインのようでしたが、日産やマツダは8本とは限りませんが、バナナスポークタイプのホイールのようでした。
この動画を見ると、0:09~の1970年のSR311は前の1967年の姿と比べるとかなり攻撃的なスタイルに変貌しています。
それでもホイールはまだワイド鉄チンです。
ワークスでも軽合金ホイールではないのです!
3:39~のGT-Rはバナナスポークタイプの軽合金ホイールです。
ファミリアロータリークーペもバナナスポークタイプの軽合金ホイールに見えます。
9:53~1971年の510ブルが映りますが、やはりバナナスポークタイプの軽合金ホイールです。
13:00~はGT-Rが映りますが、4ドアから2ドアHTに替わっています。
やはりバナナスポークタイプの軽合金ホイールです。
16:00~S30Zが出ますが、こちらもバナナスポークタイプの軽合金ホイールです。
このワークスのツーリングカーのイメージが強く刷り込まれている気がします。
また、1980年代に入って社外アルミが一般的になった頃、当時の最新社外アルミは80年代車にマッチするようなデザインばかりだった為に、当時既に絶版車と呼ばれていた1969年~70年頃の国産旧車オーナーは、昔からデザインが変わらないワタナベの8本スポークを選んだと思えます。
話が長くなったので、次回は何で1970年代前半まで現実には社外アルミが一般的ではなかった事にこだわるのかを話します。
最近はホイールのオフセットがかなりインセット気味なクルマばかりなので、昔のディッシュとはだいぶ見た目が変わってきました。
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1/24プラモ用ですw
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中古のスピードスターマークⅠですが、やはり社外アルミ派の人はインチアップするみたいですね
スピードスター MK-I 6.5Jx15 +16 4/114.3 ポリッシュ系 ガゼール カローラ レビン マークII ワゴン