カトラス☆アメ車☆旧車&イラスト

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【昭和レトロの落とし穴】文献や報道の画像の年代がズレてしまう謎【旧車】

前回は「昭和懐かしホラ吹き爺にご用心」と言う事で、間違えた「昭和レトロ」「懐かしの昭和」などが出回ってしまう原因に、年代の正確さに無頓着な昭和の人達が、思い込みの年代で昭和を知らない若い世代に不正確な情報を吹聴してしまう点について話しました。

 

今回は、TVやWebサイト、書籍などの昭和の画像や映像に表記される年代がズレてしまう謎について話したいと思います。

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前回の記事【旧車】昭和懐かしホラ吹き爺にご用心【レトロ】は、お陰様で1日でかなりの人にアクセスして貰えました。ありがとうございます。

 

そしてTwitterにこのようなツイートがありました。

ブログを書いているとついアツくなってきて、過激な言い回しになりがちですが、一日経って読み返すと少々キツ過ぎたと思う事も多いです。

 

自分の記事はかなり批判的な内容だったので、本来はこのツイートのような受け止め方が望ましいと思います。

 

 

で、予想通りこのようなツイートが見られました。

TVやWebサイト、書籍など本来正確でなければならない筈の公式や公共の、世間一般の広範囲の人達の目に留まる資料の画像や映像の年代表記に誤りがある事案です。

 

これらは公式や公共性の高い物で、たとえ一般人の我々が誤っていると指摘したとしても、その資料を見た真偽を見分けられない多くの人達の判断は、権威性の高い公式や公共の発信するほうが正しいと判定されてしまいます。

 

このような誤りは近年に始まった訳ではなく、自分が子供の頃には既にありました。

 

ただ昔は「ココに写っているクルマが表記されている年号より後の時代ですよ」と指摘すれば、周囲の人達もリアルタイムで大雑把なクルマの変遷は体感していたので誤りに気付いてくれたりもしましたが、1/3の人が昭和にはまだ生まれていない今の時代では、昭和の風景やクルマ、ファッションの流れを皆が体感している訳ではないので、公式の表記を鵜呑みにするしかない状況になりました。

 

 

  • 年代がズレてしまう理由

本来なら厳正な年代表記をしなければならない公共の資料等で、年号に誤りが生じてしまう事案には、大きく2つの原因が考えられます。

  1. 写真や映像の撮影者の記憶違いや受領した際の記録ミス
  2. 発信者の意図と受け取り側の解釈の齟齬
  • 写真や映像の撮影者の記憶違いや受領した際の記録ミス

単純にその資料を撮影した本人が年号を勘違いしてメモしてしまっていたケースもありますが、郷土史等の市民から提供された画像などでは「大体昭和30年代頃」と提供者から聞き取ったメモが、取材から何十年も経過して申し送りをしていなかったり、執筆者から編集を経て出版物や展示物に至る経過中に、多くの人を介する事で伝言ゲームの途中「大体」と「頃」が抜け落ちて「昭和30年」と表記されてしまうパターンが多い模様です。

 

下は古くから小まめにカーウォッチングをして写真にクルマを収めていた方の写真集です。

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この写真を撮影してきた浅井貞彦氏は「いつ、どこ」で撮った写真なのかを当時から几帳面にメモされていたようですし、更に専門家の高島鎮雄氏が本の監修しているので絶対間違いない筈ですが、それでも2車種の画像で「昭和3X年」と記載されているのにRT40コロナ他昭和40年代初頭の国産車が背後に小さく映り込んでいる画像を確認しています。

gazoo.com

マニアが撮影して専門家が監修していてもミスは起こるので、そこまで精通していない人達が関わった出版物などでは、表記される年代に間違いが多くなる可能性は高くなると思われます。

 

しかも令和になった今現在、出版物や映像を編纂して発信する間に関わる人達は、リアルタイムの昭和を知らない若い人というケースも多いと思うので、このような誤解釈も以前より生じ易く、元々誤認識をしていたり誤りを見抜けにくくなっている筈です。

 

こちらは当時を知らない人が解説してしまった為に、誤った情報を拡散させてしまった例です。

 

  • 発信者の意図と受け取り側の解釈の齟齬

この問題には、このツイートのやり取りまで自分は全く気付いていませんでした。

 

1957年のガソリンスタンド」というキャプションですが、クルマに詳しい人なら瞬時に1957年の画像ではないと見抜けます。

当然多数の指摘がありました。

ところが最後のツイートの通り、このガソリンスタンドは1957年に建築されたものでした。

自分はこのように発言しましたが、冷静な返信にハッとしました。

この返信を読むまで、ずっと年代の誤記は発信者のミスと思い込んでいましたが、発信者は「1957年に建築された建物」という意図で発信していて、受け取り側が「1957年の画像」と取ってしまう日本語の難解さが絡んでいたと、初めて痛感しました。

 

 

下は判りやすい例です。

この画像を見れば、バスの形状から明らかに1948年(昭和23年)の画像ではないと判る筈です。

 

この公式の発信者は「1948年9月16日に永福町営業所が開業しました。」と発信しているものの、1948年の画像とは言っていません。

 

そう考えると昔「○○地区に開設された○○公民館(昭和28年)」というキャプションの画像にケンメリのHTが写っていて「どこが昭和28年かよ・ボケ!」と思っていましたが、発信者側は昭和28年に建てられた公民館の画像という意図で写真を掲示していたと判明しました。

 

こちらも資料の二次・三次使用による伝言ゲームで、元々は昭和28年に建てられた公民館の画像という意図だった画像が、年代を経過していくつもの資料に転用されるうちに、いつの間にか昭和28年の画像として使用されてしまうケースもある筈です。

 

  • ズレを防ぐ対策

残念ながら、今後発信される文献や報道の画像の年代がズレてしまう事を防ぐ方策はありません。

 

なので、様々な発信を受ける受信者側で判断するしかありません。

 

また、詳しそうな人に尋ねる場合も複数の人から確認しないと「訳知り顔アドバイスおじさん」にデタラメな講釈を受けてしまう危険性もあります。

 

本当は自分自身が画像の真偽を見極める観察力を身に着けられればよいのですが、さすがに誰にでも出来るスキルではありません。

 

となると、まず公式だからといって安直に記述を鵜呑みにしない事と、昭和○○年の画像なのか、昭和○○年に××された物を後年撮影した画像なのかを文脈などから見極めたほうがよいと思います。

 

どうしても正確な年代が知りたい画像は複数の人に鑑定してもらい、その根拠を示して貰って、示してもらった根拠を自分自身でググって根拠を検証して真偽を判断すればよいと思います。

上記の浅井氏が撮影したヨーロッパ車の写真集です。


60年代街角で見たクルマたち ヨーロッパ車編―浅井貞彦写真集

 

立川市の高木氏が1950~60年代当時撮影し続けてきた写真集です。


東京外車ワールド―1950~1960年代ファインダー越しに見たアメリカの夢 (CG BOOKS)

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