先日、第11回 クラシックカーミーティングin山梨を見学した際にクラブで出展したのか?初代セドリックが20台弱並んでいました。
そこで今回は、この時撮影した画像をメインに初代セドリックを紹介していきます。
また、俗に「H31セドリック」と呼ばれている初代セドリック横目の後期型は、あくまで俗称であると言う事を説明したいと思います。
- 日産セドリック
まず日産セドリックとは、1960年(昭和35年)から2004年(平成16年)まで日産の高級セダンとしてラインナップされていた車種で、更にタクシー向けのセドリック営業車は2014年まで存在していました。
- 初代セドリック(30型)
初代セドリックは1960年に、それまで日産がライセンス生産していた日産オースチンA50の後継車的な位置付けとして新登場しました。
後継とは言えオースチンA50は元々英国車なので、日産で日本向けにローカライズしたものの完全に日本の国情に完全にマッチしていたとは言えず、日産セドリックが実質的な日産の最初の中型(1500cc)セダンとも言えます。
※手前は1960-61年の最初期型 ドア窓サッシのモールがなく素ガラスでハーフキャップなのでスタンダードに相当するベースグレードでしょうか? 1500か1900かは不明
- 1960年4月デビューというタイミング
今では完全に忘れ去られていますが、セドリックが発売された1960年4月の時点では5ナンバー枠は今の2000cc未満ではなく1500cc未満で、車体の寸法も今の全長4.7mx全幅1.7m以下ではなく、もう少し小さく自動車税のほうではホイールベースの長さにも制約があったようです。当時は2000ccだと3ナンバーだったのですw
今の排気量2000cc未満(ガソリン)全長4.7mx全幅1.7m以下になったのが1960年9月との事で、セドリックは数か月後すぐに2000ccに改正されると判っていながら5ナンバー枠に収める為に、当初は1500ccで登場させる必要がありました。
これが影響して初代セドリック(30・31型)は、車種によって全長が異なるややこしいラインナップを続ける事になってしまいました。
1960年4月に1500ccでデビューして、1960年11月には新たな5ナンバー枠に適合する排気量1900ccで全長とホイールベースを10センチ伸ばした「セドリック・カスタム」を登場させます。
※画像手前がカスタム(G30)で奥が1900DX(DP30) 1961年9月のマイナーチェンジ後のモデル。上画像の最初期型とはフェンダー形状とフロントグリルが異なる。
ちょうどトヨタのタクシー、クラウンコンフォートとトヨタコンフォートが、タクシーの中型枠(全長4.7m以下)と小型枠(4.6m以下)のレギュレーションに適合させる関係で、全長とホイールベースを10センチ変えて生産していたのと同じ状態です。
クラウンコンフォートとトヨタコンフォートが前ドアの長さで全長の10センチを調整しているのに対して、初代セドリックの「カスタム」では後席ドアの部分で全長の10センチを調整しています。
ちなみに他メーカーの新しい5ナンバー枠への対処は、観音開きだったクラウンはボディは変えずにエンジンだけ1900ccを追加して、1500ccと1900ccの二本立てにした後1900ccを主流にして1500ccを徐々にフェードアウト。
日産と合併前だったプリンスは、法の改正前に元々1500ccだったスカイラインの上級版として1900ccのグロリアを3ナンバーで発売。内外装は豪華にしたもののボディの基本シェルは変えていません。
法改正の後、スカイラインも1900ccを主力にしています。
次世代のS4グロリアとS5スカイラインの代になって、2リッター級高級セダンのグロリアと1.5リッターのファミリーカークラスのスカイラインという棲み分けになります。
※タテ目(30型)のテール 手前がカスタムで中央が1900DXなので、後席ドアの長さが10センチ異なる筈だが、画像からは判別不能
- バン・ワゴン追加でややこしくなるw
その後セドリックは、1961年(昭和37年)3月にバンと、1962年(昭和37年)4月に(エステート)ワゴンを追加しています。
この時全長は5ナンバー枠ギリギリにしつつ荷室を広く取る為に、全長はカスタムの4510ミリより14センチ長い4650ミリとしつつホイールベースは1500や1900DXと同じ、カスタムより10センチ短い2530ミリという仕様で登場させます。
※1961年3月登場の初期グリルのバン(V30) ワゴン(エステート)の登場する1962年4月以前の顔
※後期グリルのバン(V30) このアングルだとホイールベースと後席ドアが短く、リアのオーバーハングが長い事が判る。
初期グリルと比較すると、フェンダー上端が延長されて庇状になっているのが判る
この時点で既に全長で
- 1500&1900DX(30&DP30):4410ミリ
- カスタム(G30):4510ミリ(+100ミリ)
- バン・ワゴン(V30&WP30):4650ミリ(+240ミリ)
の3通り、ホイールベースで
- 1500&DX&バン・ワゴン:2530ミリ
- カスタム:2630ミリ(+100ミリ)
の2通りのバリエーションになっていました。
一見同じに見えるタテ目の初代セドリックでも、実際には長さが3通りある訳です。
- 30から31型に
1962年(昭和37年)10月になると、セドリックはマイナーチェンジを行い、それまでの独特な縦型4灯式のヘッドライトのフロントフェイスから横目4灯式のフロント意匠に変更され、型式も30型から31型に進みます。
※画像右側が1962年に横目になった最初のグリルで、左が1963年9月に変更された顔。
※残存数の多いH31(カスタム)に対して、今では逆に非常に希少となった31(1500スタンダード)全長とホイールベースが31型セドリック中最も短い。ガラスも水色でない透明ガラス
1963年9月~64年9月の中期グリルです。
※こちらが1964年9月以降の最終グリルとなります。
※テールランプの変遷は、1964年9月以降の最終型までの62-63年・63-64年型が赤レンズ+バックライトの二色で、64-65年の最終型で燈色の加わった三色の2タイプのようです。
- セドリック・スペシャル(50型)
更に1963年2月には、戦後の量産国産乗用車としては初の2000cc越全長4.7m超の3ナンバー車として6気筒2800ccのセドリック・スペシャル(50型)が登場します。
※明らかに5ナンバーの31型よりサイズが大きいセドリック・スペシャル(50型)
バンパーもナンバー部分で凸型になっており、フェンダーアーチからステンレスの光沢モールが続いている。
グリルも1963・64・65年型で3回変更されており、画像は1964年9月以降の65年型の最終顔です。
31型の全長は
- 1500STD(31):4490ミリ
- 1900DX&STD(G31):4590ミリ(+100ミリ)
- カスタム(H31):4650ミリ(+160ミリ)
- バン・ワゴン(VP31&WP31):4690ミリ(+200ミリ)
と4通りの全長となり、ホイールベースは
- 1500STD&バン・ワゴン:2530ミリ
- 1900DX&STD(G31):2630ミリ(+100ミリ)
- カスタム(H31):2690ミリ(+160ミリ)
の3通り
加えて50型のセドリック・スペシャル
- 全長:4855ミリ(+365ミリ)
- ホイールベース:2835ミリ(+305ミリ)
も横目セドリックの範疇に含めると、一口に横目セドリックと言っても基本のボディシェルだけで5通りものサイズに造り分けていた事になります。
1970年代以降にも、クラウンやセドリック(&グロリア)には5ナンバー車と3ナンバー車のバリエーションが登場しますが、1987年登場のS13系クラウンHTのワイドボディまでの3ナンバー車は、基本のボディシェルは共通でバンパーやサイドモールを変更する事で3ナンバーと5ナンバーの差別化をしていて、基本のボディシェルは共用する事で生産効率を保ってコストを抑えています。
FF車なら、まだエンジンとドライブトレインが一体化しているので、ボディの長さ(ホイールベース)を変えるのも容易ですが、初代セドリックはFR車なのでホイールベースを変えるとボディだけでなくドライブシャフトも造り分ける必要が発生します。
ちなみに2リッタークラスでは、どのメーカーもホイールベースを造り分けると採算が合わなかったようで、この後のセドリック・グロリア、クラウンでは50系クラウンでセダン/2ドアHT/バン・ワゴンで全長は変えていたものの、ホイールベースは全車共通で、その後はセドリック・グロリア、クラウンの全車で全長とホイールベースはセダンでもバン・ワゴンでも2ドアHTでも同一寸法の時代が続きます。
このようにその後は生産効率化で、主要な部分のサイズは共通化されてしまった国産2リッタークラスの中で、初代セドリックはパッと見同じに見えても、いちいちボディ自体から造り分けていた車種なのです。
- 俗に「H31セドリック」と呼ばれる横目セドをどう呼ぶか問題
俗に「H31セドリック」と呼ばれている横目セドリックですが、ココまで説明してきた通り、厳密には「H31セドリック」というとセドリック・カスタムのみを指すコトバになってしまいます。
とは言え旧車の世界では「H31セドリック」という呼び名は余りに深く浸透しているので、たとえ不正確な呼び名だと言ってもなかなか別の呼び名も思い浮かびません。
その辺に関して書くつもりでしたが、長くなり過ぎたのでAE86や81マークⅡなどの呼称問題と絡めて、次回述べていくことにします。
比較的最近出たY30のワゴンです。

トミカリミテッドヴィンテージ ネオ 1/64 LV-N209c 日産セドリックワゴン V20E GL カスタム仕様 白/木目 完成品 315193
H31セド・カスタム、グリルは64-65の最終に見えます。

トミカリミテッドヴィンテージ TLV124aセドリック カスタム(黒) 完成品
TLVシリーズで一番最初に出たタテ目セドのカスタム(G30)です。

トミカリミテッドヴィンテージ LV-01f 日産 セドリック ( アイボリー )
前期130セドの四社カラーのタクシーです。テールで判断すると最初期型のようです。

トミカ リミテッドビンテージ LV-151a セドリック タクシー (日本交通) 完成品
1/43スケールの後期セドバン(V31)1963-64の中期グリルのようです。

NOREV 1/43 NISSAN 日産 セドリック バン VP31型 1964 ライトグリーン
230セドの前期グリルです。

トミカリミテッドヴィンテージ ネオ 1/64 LV-N205a ニッサン セドリック 2000GL 71年式 茶 完成品
実際には「31セド」と言うと、こちらの「Y31セド」を示す場合が大部分のようです(1/43スケール)

CARNEL 1/43 日産 セドリック CLASSIC SV (PY31) 1998 プラチナ シルバー 完成品
Amazonアソシエイト