カタチの崩れた絵は下手に見える
初心者限定のカーイラスト入門その3
今回は、カーイラストの基本中の基本、カタチの崩れに要注意。デフォルメ画でもカタチが基本という話です。
- クルマのイラストはカタチの崩れがバレやすい
人間は、見慣れた物の中に異質なモノを見つけると違和感を感じて、つい違和感を感じる部分に目がいってしまたり、逆に拒絶反応を示したりします。
動物、自然の風景等のイラストは、厳密な数値で作られている物ではないので、若干寸法関係がズレていても許容量の範囲でそれほど違和感を与える事は少ない場合もあるのですが、クルマ等の乗り物や身近な家電製品等と、日常見慣れている人物の絵は、少しでも基本的なカタチが崩れていると瞬時に見抜かれてしまい、違和感を覚えます。
絵を見ている人はこのメカニズムを知らない人が多いので、具体的に何がどうおかしいのか判らないまま、見た絵に「何か変」⇒ヘタクソという印象を持ってしまいます。
コレが何となくヘタクソな絵と思われてしまう原因の一つです。
でも、「プロや絵師は独自の画風やデフォルメをしているじゃないか」という反論に関しては後述します。
クルマの場合、根本的にタイヤが4輪ともキチンと地面に正しい位置関係で接地される状態で描かれていないと、真っ先に違和感の対象になってしまいます。
違和感とは具体的にはボディがよじれた状態で描かれている事を指します。
これは常に平坦な地面にタイヤが4輪接地している絵だけを描けと言っている訳ではありません。
コーナーでロールしているレースカーやスポーツカーを描いても、坂でタイヤを一輪岩に乗り上げている4WDを描いても構わないのですが、その時必ず元々の車体自体はタイヤが4輪ともキチンと地面に接地される状態でボディも歪んでいないクルマが、ロールしたり岩に一輪タ乗り上げている状態に見えるように描かなければならないという事です。
画像左がよじれた状態で、右下は傾いていてもよじれていない状態です。
画力が不足してデッサンが狂ってしまうと、どうしてもロールしたり岩に乗り上げた状態に見えず、下の絵のようにボディがよじれて歪んだ車体に見えてしまいます。
このように延長線を書き込むと、カタチの狂いが一発で判ります
なので、コーナーでロールしているレースカーやスポーツカーやタイヤを一輪岩に乗り上げている4WDを描きたい気持ちは充分判りますが、クルマのカタチが絵を見た人に違和感なく伝えられる画力が着くまでは、トレースを繰り返して練習を重ねる事を強く推奨します。
また、平坦な地面にタイヤが4輪”正しい位置関係で”接地している事が重要です。
何の事かというと、あなたが描きたいと思っている車種のタイヤの位置関係は確定しているので、コレがズレると違和感が発生するという事です。
具体的には、そのクルマのタイヤの上や前後の配置は決まっているのでズラせません。
Aピラーからドアの開閉部の線が下がって、前タイヤと干渉しないでドアが開閉する筈のクルマを、ドアとタイヤが干渉するように描いてしまったらアウトだという事です。
そのクルマのタイヤがどこにあるのかの位置関係は決まっています。
特にAピラーと前タイヤの位置や後輪とCピラーの位置は狂いやすいので要注意です。
下のように描いた物を横から見ると、実際は青い側面なのに、緑線みたいなタイヤとドアのラインの位置関係になってしまいます。
タイヤの位置が狂って描かれています。
コレは画力が不足してデッサンが狂ってしまう人や、クルマを描き慣れていない人がメチャメチャ陥りやすいパターンなので本当に注意が必要です。
特にきつい角度の斜め前方からの描写では、車体の奥行きが詰まってしまうので描画の難易度が非常に高く、絵の上手い人でもクルマを描き慣れていない人だとやってしまいがちですが、クルマ好きなら絶対常に気に留めて避けるべき項目です。
クルマを描く場合、基本中の基本でコレだけは何としても表現出来るように会得しておくべき項目です。
なので当方は基本的なカタチが崩れにくい、見本画像を下敷きにするトレースから始める事を強く推奨します。
また、今までこのタイヤとボディの位置関係を気にしないでイラストを描いていた人は、是非自分の作品をチェックしてみて下さい。
もしかしたらあなたの絵を見た人は、このタイヤとボディの位置関係のズレを無意識に察知して、上手いけど何かイマイチな絵と判断されてしまっていたかも知れません。
- デフォルメや独自の画風
上記の説明で理解して下さった方も居ると思いますが、プロや絵師の人が独自にアレンジした個性的な画風や特徴的なデフォルメで絵を描いて、キチンと評価されているのは、これらの基本中の基本を完全にマスターした上で意図的にカタチを崩しているので、絵を見た人も違和感を感じずに絵を受け入れられるからです。
どんなにデフォルメされていて個性的も、ちゃんとコーナーでロールしていたりタイヤは一輪岩に乗り上げているように見えている筈です。
コレを観ればカタチが歪んでしまったのではなく、意図的にカタチを歪ませて、人物風の動作を表現していると理解出来ますよねw
改めて見返したら、クルマのボディをよじらせるデフォルメ表現ではないと知りました。
手描きの時代にコレだけ動かしてもデッサンが狂っていません。
「#ルパン三世カリオストロの城」には外せないシーンがいっぱいある。特に序盤のカーチェイスシーンは、心をわしづかみにされた人も多いはず。
— コバキン(kobakin) (@kobakin1967) 2020年11月20日
リムジンと2CVとチンクェチェントの車重を描き分けた名作画。#ルパン三世 #カリオストロの城 pic.twitter.com/odb3XXw3q3
たとえドアのラインとタイヤが干渉していても、誰が見てもその車種だと分かるようにデフォルメして描いてある筈です。
TOUGH #自動車 #車 #チョロQ #デフォルメ #三菱 #Mitsubishi #パジェロ #PAJERO #デリカ #DELICA https://t.co/HoNXstFg6U pic.twitter.com/3uXkFMCke9
— さとしお (@sato_sio_sj30) 2020年2月29日
大部分のプロや絵師の人達は、最初の1枚目から自分独自の画風でちゃんとした上手い絵が描けた訳ではなく、基本を踏まえて画力を向上させ、試行錯誤した上で独自の画風を編み出している筈なので、いきなり個性ガーといって基本を無視して自分の画風で描いても、誰かのモノマネの劣化版の域から脱せなくなってしまう気がします。
- 模写でカタチを崩さない方法
見本を下敷きにするトレースである程度の描画が出来るようになったら、第二段階として、見本を下敷きにしないで見ながら描き写す模写を次のステップにする事を強く推奨します。
模写とは、見本を見ながらマネして描く事です。
トレースから一歩進んだ練習で、下敷きにしていた見本のガイドラインが無くなるのでカタチが狂いやすくなります。
模写でカタチを崩さない方法は、見本の画像とキャンバスに格子状のグリットを書き込んでしまう事です。
お絵描きアプリには定規やグリッドの機能が備わっている場合が多いので探して利用して下さい。
アナログの場合は見本の他にコピーに グリッドを書き込んだ物を用意しても良いかも知れません。
ボディのシルエットなどは、端からカタチを追って描いていくとほぼ間延びしたり寸詰まりになります。
間延びや寸詰まりは、その人の味で個性だと主張する人はそこまでしか成長しません。
上は当方がアナログで描いた模写ですが、下の線画が元の写真をなぞった線で、重ねてみるとかなりカタチが崩れています。
プロや絵師は、基本を踏まえた上で意図的に間延びや寸詰まりをコントロールさせています。
間延びや寸詰まりを防ぐにはグリッドを書いて位置関係を確認しながら、正しい位置に線を置いて描いていく事が重要です。
上達したら見本には実際にグリッドは書かずに、目測で位置関係をチェックしたり、定規を当てて上下方向や左右方向の位置関係を確認するようにして、徐々に目測だけで対象物の形状を描画出来るように訓練していきます。
プロや絵師も、こうした積み重ねで正確な形状をスラスラ描けるように上達していった筈です。
当方はアナログの場合、鉛筆を推奨します。
当方はステッドラーを使用していました。
ステッドラー 鉛筆 ルモグラフ 製図用 12硬度セット 缶ケース 100 G12
鉛筆の硬度は4B~2Bメインで細部にHB等が描きやすいと思います。
トレーシングペーパーではやや硬めでも良いかもしれません。
ステッドラー 鉛筆 ルモグラフ 製図用 4B 12本 100-4B
指で自由にカタチが変えられるねりゴムも便利です。
グラデーション的にぼやかした消し方が出来ます。
消しゴムのようにガッツリ境界キッチリと消すには不向きです。
ホルベイン デッサン用ねりゴム NO.5
100均のMDF板とクリップでも十分ですが、画板になる板は必須です。
プラス A4サイズにおりたためる A3クリップボード+ ダークグレー 83-151 専用ストラップ 付
この15枚全部、途中で投げ出さずに一旦完成させる程度の練習は必要だと思います。
A4サイズ トレーシングペーパー (15枚入り)
B5なので少し小さいかも知れません。
うつし絵 30枚入り
描いた絵の鉛筆を紙に定着させるスプレーです。
トレぺだと、紙がふやけるかも知れません。
ホルベイン 画用液 スプレーハンディフィキサチフ O620 100ml 005620
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