という事でプラモネタ第二段、今回は旧イマイ、現アオシマのワーゲンビートル1303S
所謂スーパービートルに手を加えてみます。
- フォルクスワーゲン1303S
まず実車のフォルクスワーゲン1303Sからおさらいします。
とは言え、自分もVWの専門家ではないので大雑把な事柄です。
実車の能書きが長くなりましたが、「VWタイプⅠはどれも一緒」にしか見えない人にはどうしても伝えたい事なので、少々ガマンして読んで下さいw
1303と1303Sの違いや1200LSと1200LEの違いのような細かい点は、自分も詳しくないので代表的なモデルの名で記します。
- VWタイプⅠの最終進化系
カブト虫の愛称を持つVWタイプⅠですが、市販はしなかった1938年~の戦前型から、ブラジルやメキシコで西ドイツ本国での生産終了後も最後まで生産されていた物までの間には65年間という長い期間が経過しているので、単にフォルクスワーゲンビートルと言っても、全部同じではなく年代ごとに様々な変遷を遂げています。
アオシマ(旧イマイ)のVW1303Sは、歴代のVWタイプⅠの中でもある意味異端なモデルで、一時期はワーゲンマ二アからゴミ扱いを受けた不人気車種でした。
もちろん今では、立派なオールドビートルとして扱われていますw。
- スーパービートル
戦後市販されてから、長らく改良を重ねて変遷してきたVWビートルですが、1970年代に入って大幅に手直しされた車種が追加されました。
それはVW1302Sで、フロントのトランク容量を増やすためにトランク(フロント部)の形状を変更、ずっと踏襲してきたトーションバーのフロントサスペンションからストラットサスペンションに変更して、旧態依然としたVWタイプⅠのアップデート化を目論見ます。
空冷VWビートルには、フロントの足回りがトーションバーとストラットの2種類が存在します。ストラットの足回りを持つのは1302系と1303系です。
— 高速有鉛StreetVWs(中の人) (@FEN810kHz) 2021年10月12日
どこが違うのか、以下の記事で解説しています。その違いをお楽しみください。https://t.co/xrm8UhXmWo pic.twitter.com/mM1mGwwxUZ
イマイで模型化されたVW1303Sはそれを更に進化させたモデルで、それまでずっと平面ガラスだったフロントウインドウを曲面ガラスに変更し、ダッシュボードも樹脂製の新デザインに刷新されました。
この1302Sと1303Sは「スーパービートル」と呼ばれ、他のVWタイプⅠとは区別されています。
←トーションバーモデル(VW1200)
— 高速有鉛StreetVWs(中の人) (@FEN810kHz) 2018年12月19日
ストラットモデル(1302/1303)→
1303Sのように“S”がつくと1600ccエンジンになります。
例外は気にせずに基本だけ知っておくと、ある日突然にハマるのがVWビートルの恐ろしい魔力です。「カワいい」という理由だけで買った人が気づけば超マニアの事例多数。 pic.twitter.com/GDqnJhJv3w
上の画像のように2台並べた上で説明すれば、余程鈍感な人以外の大部分の人は「VWタイプⅠはどれも一緒」ではないと理解して貰えると思います。
このスーパービートルが登場した1970年代前半の時点で、ヨーロッパの同クラス大衆車の主流は既にFF車に移行しており、リアハッチを設けた2ボックスタイプのボディが普及し始めた頃なので、VWタイプⅠの需要はそれまでの一般的な大衆車から、大衆車として使えて更にビートルの丸いボディに凡庸な他者とは違う自分の選択という個性や趣味性も求める層に変わり始めていました。
この層から見れば、VWタイプⅠの伝統だったトーションバーのサスペンションを辞めてしまい、モッコリと膨らんだフロントのトランクは不格好と判断されてしまい、1303Sに至っては平面ガラスも曲面に変更、インパネも刷新されてしまった事で不細工な仲間外れのレッテルを貼られてしまう事になりました。
この為「スーパービートル」は長続きせず、本国で1978年(79年?)に生産終了後、2000年代に至る最後まで海外で生産されたモデルもトーションバーサスペンション&平板ガラスの従来型のモデルとなっています。
- イマイ 1/24 VW1303S
現在はアオシマから販売されている1/24スケールのVW1303Sですが、元はイマイ(今井科学)から出ていた製品です。
セダンとカブリオレが出ています。
アオシマ(イマイ)のビートルってどうだっけ?という話になったので備忘録。 pic.twitter.com/jaTFKG1XzB
— matsu (@matsubara_sho) 2020年7月9日
初版はどうやら1978年頃のようで、この年は西ドイツ本国でのVWタイプⅠセダンの生産が終了した頃で、日本の子供たちの間では「ワーゲン占い」という、その日見たワーゲンの色で運勢を占う遊びも流行っていました。
FLAT4やSCATエンタープライズ等を介して、既に日本でも空冷ワーゲンをイジって楽しむ層も生まれ始めた頃でした。
トミカ&トミカダンディやバンダイの1/20もこの前後に出た記憶があるので、1970年代中盤~後半の当時はちょっとしたVWブームだった気がします。
トミカとトミカダンディのセダンは従来型の1200LSで、トミカのカブリオレのみ1303Sだったようです。
バンダイ1/20は曲面ガラスの1303Sのモデル化です。
今回ググっていて、同年代頃と思われるミツワ製1/20も出てきましたが、箱絵が1303Sなのに中身は平板ガラスなので詳細は不明です。
イマイの1/24は、子供たちの「ワーゲン占い」の文言をパッケージに添えたカラーバリエーションを展開させたり、ルーフキャリア等のパーツを追加したラリーバージョンなどが出ていたようです。
セダンは当時見掛けたデザインのヤナセ純正アルミ「カブトムシホイール」を装着した仕様で、カブリオレのほうは純正お椀キャップ付きの鉄チンホイールだったようです。
楽天の通販から、公式の作例(※広告)
アオシマ 1/24 ザ・モデルカー No.73 フォルクスワーゲン 13AD ビートル 1303S '73
なのでセダンで純正鉄チン仕様にしたい場合は、カブリオレから純正鉄チンを流用する必要がありました。
逆にカブリオレで「カブトムシホイール」を装着したい場合は、セダンに付属するホイールを入手する必要があります。
記憶が不確かでうろ覚えですが、もしかしたらセダンのほうが内装が平板な上げ底気味で、カブリオレのほうがセダンよりは内装がやや作り込んでいたような気もします。
もしそうだとすると、セダンでもカブリオレから内装周りも流用するという選択肢も出てきます。
アオシマ版になってからゴムタイヤが変更されたようで、セダンの「カブトムシホイール」は変わりませんが、カブリオレの純正お椀キャップ付き鉄チンは、アオシマ版に作り直されている模様です。
残念ながら、アオシマ版の純正お椀キャップ付き鉄チンは再現度がイマイチです。
スーパービートルは実車のほうも変遷しているようで、VWマニアではないので詳しくは判らないのですが、当初丸いフェンダーの頂点に付いていたウインカー(車幅灯?)は、末期にはバンパーに組み込まれた模様です。
ウインカーのバンパー組み込みと同時に、日本仕様では丸いフェンダーとドアの間のパネルに、ウインカーが設置されています。
またスーパービートルでは、フロントフード下のエプロン部分に細い縦穴のスリットが並んでいるのですが、ウインカーがバンパーに移設された頃のモデルでは、スリットが開いている個体と何もない個体が見受けられるので詳細は不明です。
フロントフードの形状も、途中から下端がカットされたような直線的なカタチに替わったようです。
イマイ~アオシマのキットは、このうちウインカーがバンパーに移設された後で、エプロン部分にスリットが並んだタイプ、フロントフードの下端がカットされた形状をモデル化しています。
- イマイ-アオシマ 1/24 VW1303Sの難点
このキットで気になる点は2点です
- フロント周りの造形
- タイヤとホイール
このキット、実車を忠実に再現しているかどうかは別として、後部から見た姿はビッグテールのVWタイプⅠの雰囲気を非常に良く表しています。
ところがフロント周りは、スーパービートルの特徴であるモッコリ膨らんだ幅広なフロントフードや、ややライトが離れ目気味に見えるフロントフェンダーが充分再現されているとは言い難いと思います。
但しこの記事を書くために、様々なイマイ-アオシマ 1/24 VW1303Sのレビューや作例を確認しましたが、フロント周りに対する不平不満や作例での手直しはほぼ見られないので、もしかしたら自分の感性・感覚が特異なのかも知れません。
また付属のタイヤも「カブトムシホイール」のほうはまだ良いとしても、純正お椀キャップ付き鉄チンのほうは扁平ワイド過ぎで、もっと細くて扁平ではない厚みのあるタイヤのほうがマッチする筈です。
- イマイ 1/24 VW1303Sの顔を修正する
30年前に自分が手を加えたVWカブリオレの画像です。
不鮮明な画像しか残っていません、とても作例として自慢出来るような仕上げではなく、かなり大雑把な仕上げですが、自分個人としてはキットの形状のままテカテカに磨き上げた作例より余程実車を再現していると感じています。
楽天の通販から公式の作例です(※広告)
アオシマ 1/24 フォルクスワーゲン 15ADK ビートル 1303S カブリオレ '75 スケールモデル ザ☆モデルカー No.75
Twitterから実車の画像です 三つをスクロールさせて顔を比較してみて下さい。
VW 1303 Karmann @orsoladelzenero @marcoan7339 @airzerooo @mobyfeat @interieurprofi @LuisChaparro4 @uchuta_m @Snugbucket @N13lCl @JohnPierceIX @Cosito1Horacio @fredericksagli1 @porsche_911_996 @kmandei3 @mnica733 @JCarmonaa89 @motorespuntoes @small_talk77 @ren_119 @Chico19910 pic.twitter.com/c8LrF54Q0I
— Mauro Beltramo (@MauroBeltramo) 2020年6月27日
キットの形状で気になる部分は
- 実車のフロント周りは、先端に向かうに従って傾斜がキツくなって丸みを帯びるのに対して、キットは全体に先端の傾斜がなだらかでポルシェっぽいw
- フロントフードの盛りが不足している印象
- フロントフードのプレスライン先端の位置が高め(フードのドアハンドルとの位置関係)
- フェンダーとエプロンの下端部分の折り返しがエッジのように尖って見える
- フェンダーのヘッドライト周りの印象が実車と異なる(ライトとバンパーの隙間が間延びした感じ)
- ヘッドライトが実車より寄り目な印象
ちなみに従来からのトーションバータイプは、フロント周りがまるで別物です。
結局、全面的に作り直すだけの技量は到底持ち合わせていないので、最小限の加工でそれらしく見える細工を施しています。
余談ですが、個人的には壮大な改造プランを思い描くものの、途中で手に負えなくて収拾がつかなくなり結局放置させてしまう位なら、自分の技量と相談して破綻しないギリギリのレベルを狙って、放棄せずに曲がりなりにも一応一旦は完成させたほうがキットも報われると思うのですが、大きなお世話ですねw
フロントフードはプレスラインをカッターで削って延長し、フード先端もパテで延長した筈ですが、どう細工したのか忘れました。
但しこの当時リサーチ不足で、モデル化された実車はフードの下端がカットされたような形状だったとは知らず、1303初期タイプを目指して加工しています。
フロント先端の傾斜の緩さと、エプロンの折り返しのエッジのキツさを、ボディを削って修正したような気がします。
確認はしていませんが、トーションバーのVWとスーパービートルではフェンダー自体互換性がない別パーツではないかと思っています。
自分の印象では、実車はトーションバーのVWよりヘッドライト間が開いているイメージですが、キットには寄り目気味な印象を持っています。
しかしこの部分を大掛かりに修正する力を持っていないので、キットのヘッドライト取り付け穴の位置は変更しない範囲内で、極力実車の印象に寄せる修正を施しました。
- タイヤとホイール
キットのホイールはイマイ時代のカブリオレなので、純正鉄チン+お椀キャップの出来は良いのですが、タイヤが太くて扁平な点が自分のイメージと異なったので、イマイ製1/20ルノー4CVの細いタイヤに変更しました。
ホワイトリボンは塗装ではなく、カッティングシートをサークルカッターで切ったモノを貼っています。
今アオシマ製を純正鉄チン+お椀キャップ仕様にするなら、ハセガワ製の1967年式のタイヤ&ホイールの流用を推奨します。
実車のビートルでは、1967年頃にフロントディスクブレーキのモデルがラインナップに加わり、それまでの日本の360cc軽自動車の合わせホイールみたいにブレーキにリム状のホイールを固定する方式(PCD205/5穴)から、1968年には全車他車同様の一般的なホイール(PCD130/4穴)に仕様変更されます。
ハセガワ製のビートルは1967年式とそれ以前の1966年頃のキット化で、旧タイプのPCD205/5穴からPCD130/4穴への過渡期のホイールですが現在入手しやすいキットの中では最も見た目が1968年以降のホイールに似ています。
1950~60年代の旧いビートルに、一般的な社外アルミを装着した仕様の模型化は、足回りを改造されたカスタム車や高年式のメキシコビートル等をビンテージVW風に改装した実車という設定が出来るのでアリかも知れませんが、スーパービートルに1950~60年代の旧いビートルのPCD205/5穴ホイールは現実的ではないので避けたほうが無難です。
以上、かなり長くなりましたが、アオシマの VW1303Sを作ろうとしている方の参考になれば幸いです。
Amazonからアオシマの1303Sカブリオレです。
アオシマになってホイールが替わってしまったのが、やや残念です。
青島文化教材社 1/24 ザモデルカーシリーズ No.75 フォルクスワーゲン 15ADK ビートル 1303S カブリオレ 1975 プラモデル
アオシマの1303Sです。
青島文化教材社 1/24 ザ・モデルカーシリーズ No.73 フォルクスワーゲン 13AD ビートル 1303S 1973 プラモデル
ハセガワの1967年式です。67年式は旧いビートルと新しいビートルのいいトコ取りなモデルです。
ハセガワ 1/24 フォルクスワーゲン ビートル 1967 プラモデル HC3
タミヤの1966年式です。旧いビートルの最終モデルです。
タミヤ 1/24 スポーツカーシリーズ フォルクスワーゲン・ビートル
ドイツレベルの1968年式です。68年からタイプⅠも大幅に刷新されますが、作例はスタンダードバンパーのモデルのようです。
ドイツレベル 1/24 VW ビートル 1500 07083 プラモデル
かつてはトミカのワーゲンと言えば高年式の1200LSでしたが、今ではこの旧タイプの新製品を指す時代になりました。
トミカプレミアム 32 フォルクスワーゲン タイプI
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