カトラス☆アメ車☆旧車&イラスト

アメ車旧車を中心に、クルマにまつわる話を綴ります。

【映画】ヘアピンサーカス(1972)とトヨタ2000GTのその後【劇用車】

今回は1972年公開の映画「ヘアピンサーカス」の紹介と劇中に登場したトヨタ2000GTのその後についての話題です。

前半:映画について

と、

 後半:劇中のトヨタ2000GTのその後

という構成にします。

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画像出典:ヘアピンサーカスDVDブックレット

先日この件のツイートをしたところ、 トヨタ2000GTのその後の情報を含む多数の反響を頂きました。

今回はそのツイート文も引用して記事を構成します。

 

  • ヘアピンサーカス

 まず映画の説明ですが、五木寛之原作で西村潔監督の映画です。

主演は当時トヨタのワークスレーサーだった見崎清志と、若手女優だった現目黒祐樹夫人の江夏夕子で1972(昭和47年)公開です。

 

当時それほどヒットした訳ではないので、その後長らく日の目を見ず、トヨタ2000GTが出ているので一部のクルマ好きの間では2009年にDVDが出るまでの30年間「幻の映画」として語り継がれていたようです。

 

あらすじを細かく記すような内容ではないのですが、ザックリ解説すると

かつては第一線のレーサーだった島尾俊也は優勝したレース中、親友でライバルだった三沢を競り合いで事故死に追いやってしまい、以降レーサーは引退して今は運転免許の個人指導員として、スピードへの情熱には封印したまま妻子を儲けて静かに暮らしていた。

ある時、1年前に抜群の才能で最短10日で免許を取った元教え子の小森美樹を偶然見掛ける。

運転テクニックに対してずば抜けたセンスを持つ美紀は、数名の男友達を引き連れて深夜トヨタ2000GTを乗りまわし、生意気にスポーツカーなんかに乗る若いネーチャンと反応して絡んでくる自称腕自慢な連中をカモにしては罠にはめ、高度な運転テクニックで相手を自爆させては撃墜したと事故を誘発させる行為を楽しんでいた。

再三の島尾の忠告を無視して違法行為で事故誘発を繰り返す美樹に対して、違法行為をやめさせようと島尾もレーサー時代のチームからサバンナRX3を借りて、美樹たちの挑発を待ち構える。

美樹たちはサバンナRX3を罠にハメたと思ったが、高度なドライビングテクニックで男友達のホンダCB750、セリカGT、アルファロメオ1300GTジュニアは次々と撃退させられてしまう。

 

最後に残った美樹はサバンナRX3のドライバーを見て島尾と気付く。

二人はスピードの世界でしばらく絡み合ったあと、カモたちを次々と自爆させていた罠のT字コーナーへ猛スピードで突入する。

 

といった感じです。

 

この映画を否定的な観点から端的に表す感想文を見つけたので

filmarks.com

投稿された感想をそのまま引用して解説したいと思います。

とうがらしの感想・評価

2021/05/20 02:10

1.9

臭いセリフのオンパレード。

撮りたいシチュエーションと構図をつなげているだけ。 

興味のない人に言わせるとこんな感想になります。

 

>臭いセリフのオンパレード。

何しろ主役の見崎清志をはじめメインの役者は俳優ではなく、この映画が演技は初めてのプロレーサーなので、俳優のような演技を求める事自体が野暮ですw

当然セリフ棒読みで硬い演技ですw

 

>撮りたいシチュエーションと構図をつなげているだけ。

 この映画が作られた頃までは、予定調和でラストは皆ハッピーエンドで大円団というのが定型だったトコロにアメリカンニューシネマが登場して、決して主役が聖人君子で万能なヒーローという訳ではなく最後は目的を果たせないまま死んでしまうような、今までの常識を覆す作品が出始めて衝撃的で、このテイストを取り入れたかったようです。

 

また、撮影は無許可で深夜にクルマを走らせて行われていたようで、それまでの普通の映画のようにギンギンな照明の下で大型カメラで撮影するのではなく、当時最新の小型で従来より感度の高いカメラを取り寄せて撮ったようです。

ゲリラ撮影なので細かいカット割りをしてコンテに沿った映像が撮れる状況ではなく、暗くて制限のある状況の中でとにかく撮れる物を撮ってつないでいったようです。

 

そんな映画なのでこの辺の事情を無視して普通の人気映画と同じレベルを求めようとすると、こんな感想になるのも当然です。

 

このためクルマ好きではなくこのような事情を理解できない人には、つまらなく感じると思います。

 

興味のない人だと目に入らない、こんなシーンもクルマ好きの人は楽しんでいます。

 

  •  ヘアピンサーカスの劇用車

 この映画は、オートモビルディレクターとして参画している大坪善男氏が大きく関与しているようで、登場する劇用車も大坪氏が手配したもののようです。

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画像出典:ヘアピンサーカスDVDブックレット

  • トヨタ2000GT

劇中では、美樹の乗る改造された黄色いトヨタ2000GTが、かなりのシーンで登場します。

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画像出典:ヘアピンサーカスDVDブックレット

最後は壁に激突して横転しているようにも見えます。

これは大坪氏が所有していた車両のようです。

大坪氏は元トヨタのワークスドライバーで、事実上の戦力外通告を受けて引退したあと映画業界に転身したようで、遅れていた日本の映画業界の自動車を扱うシーンの技術や技法のアップデートに貢献した人物のようです。

 

大坪氏がトヨタを去る際に、退職金代わりにトヨタ2000GTを貰ってよいかと尋ねたところ、当時のトヨタチームはトヨタ7に注力していた為にあっさりOKが出たようで

3台のレース仕様のトヨタ2000GTを譲渡されたようです。

 

映画製作にあたって、譲渡されたどれも中途半端な状態の3台を組み合わせてまともな1台を製作し、ダメな状態の1台はクラウンのエンジンを積んでクラッシュ&横転のシーンに使用したようです。

  • マカオのレーシングカー

冒頭でマカオグランプリのレースシーンが挿入されますが、映画のクランク前に先行して主役の見崎清志氏が参戦するマカオグランプリに同行し、レース会場の開催シーンやレーシングカーにカメラを車載して車載カメラの映像を撮影したようです。

 

日本ではよみうりランドの駐車場をマカオに見立てて撮影し、オレンジ色のレーシングカーがクラッシュするシーンは江の島の駐車場で撮影されたとの事です。

 

青いレーシングカーは見崎清志氏がレースで使用している実車。

クラッシュするオレンジ色のレーシングカーは大坪氏が持っていた物のようです。

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画像出典:ヘアピンサーカスDVDブックレット

  • サバンナRX3

トヨタ2000GTに対抗するサバンナRX3は、マツダのレース部門から借りた車両のようで、撮影でボロボロにして返却して激しく怒られたようです。

詳しく観察すると、当時のアクセサリーパーツが各部に使用されていて興味深いですよw

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画像出典:ヘアピンサーカスDVDブックレット

  • セリカ1600GT 

現トムス代表の舘信秀氏がドライブするセリカ1600GTも、大坪氏が所有していた車両のようです。

 

  • アルファロメオ1300GTジュニア

佐藤文康氏がドライブするアルファロメオも、大坪氏が所有していた車両のようです。

クルマを壊さないように器用に横転させています。

佐藤文康氏もレーサーで、1983年にレースの練習中にサーキットで事故死されたようです。

 

  • ホンダCB750

バイクには詳しくないのでバイク自体もライダーも判りません。

最後に水路の高い擁壁から落としていますが、当時は中古でもホンダCB750は高価だったと思います。

落ちるシーンで他車にすり替えられているのかの判別は、当方は出来ません。

 

  • トヨタ2000GTのその後

映画に使用されたトヨタ2000GTは、前述の通り元トヨタワークスのレース仕様車で部分的にアルミボディになっていたようです。

画面でもインパネが市販車と違っていたり、給油口が逆側に移設されているのが確認できます。

屋根がくり抜かれていますが、これは撮影用に大坪氏がカットしてしまったようです。

トヨタ2000GTのレース仕様車にはザックリ試作車ベースと量産型ベースの2通りあるようで

、市販車の画像と並べて比較すると、試作車ベースのレース仕様車は車体のシルエットが市販車と全く異なる事が判ります。

下の動画は試作車ベースのレース仕様車です。

映画の車両は量産型ベースのようなので、1967年の富士24時間レースで1・2位を獲得した車両、もしくは鈴鹿1000kmの車両やその予備車の可能性が濃厚です。

 

劇中でメインで走行していた車両はその後河口湖自動車博物館に譲渡され、富士24時間レースの塗色で展示されているようです。

 

壁に激突して横転してしまうシーンの車両は、メインで走行していた車両とは別物との事です。

 

こちらはその後、1976年の「俺たちの旅」というTVドラマの1シーンに解体屋に積まれた廃車体として画面に一瞬映ります。

1975~6年頃杉並の解体屋にしばらく積んであったようです。

この廃車体は他県の解体屋に移ったあと、切り刻まれてしまったものの、残骸を保管されている方が居るようで、並べると片側分の側面とリアゲートは残されている様子です。

2009年にDVDが出てすぐ買いましたw

 映像特典で予告編のほか、原一民(撮影)安武龍(製作)大坪善男(オートモビルディレクター)見崎清志(主演)の2009年時点のインタビューが収録されています。


ヘアピン・サーカス [DVD]

 

その後ブルーレイも出たようです。こちらも同じインタビューが収録されている模様です。


ヘアピン・サーカス [Blu-ray]

 

トミカでも製品化されていたようです。


トミカあこがれの名車セレクション2 トヨタ 2000GT ヘアピン・サーカス仕様

 

ジャズに疎いのですが、菊地雅章が担当との事でサントラも評価が高いようです。


ヘアピンサーカス(オリジナル・サウンドトラック)

 

五木寛之の原作の電子書籍(キンドル)版です。

89円なので読書好きな方は、読んでみても良いかも知れません。


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